戸塚の家
神奈川県横浜市
敷地は、昭和30年代に開発された横浜市内の複雑な丘陵地形をなしている住宅団地にあります。今回、ご主人が生まれ育ったご自宅を建替えるにあたって、高温多湿な夏や乾燥が厳しい冬の気候対策。造成当初の擁壁に積み増しされていた土留めの解消。元気に成長する子供達のための住環境づくり。といった課題を背景に、「温熱環境」「耐震性」「楽しく便利な暮らし」を設計のテーマとして計画を進めました。
地域に残る豊かな緑と成熟した街並みに呼応するよう、丘陵地形を活かした外構と植栽計画を行うことで、周辺環境との連続性を確保するとともに、世代を超えた地域の交流を育む住まいを目指しました。
この家は木組み土壁の伝統的構法でつくられていますが、屋根と壁の外側には自然素材の断熱材を付加し、ベタ基礎の内側には樹脂系断熱材を貼り付けてあります。伝統的構法の魅力とその弱点を丁寧に紐解き、現代の知恵や技術を導入することで、より快適な住まいを目指しました。

空間構成は大屋根に包まれた一体的な空間とし、緩やかに領域を分けながらも、家族の気配が感じられる関係性づくりに配慮。
そして、断熱性、蓄熱性、調湿性の高い空間をつくり、風や光、熱をコントロールするための設えを丁寧に設計することで、基本的には窓の開閉による室内の温熱環境の調整。さらに、最寒期や最暑期にはエアコンも適切に利用しながら暮らすことで、設備に頼りすぎずに高い快適性と省エネ性を実現しました。


ポイント
POINT
1
風と光を適切に呼び込む空間構成
❶ 様式・形態・空間構成

立体的に窓を配置することで、風がない日でも上下階の温度差による自然換気を誘発します。また、上部角に窓を配置することで、自然光が壁と天井を照らして空間を明るくしてくれます。太陽の動きに呼応して変化する室内空間には豊かさ感じます。

霧除けや土庇、深い軒によって、強い日差しをコントロールしてくれますし、雨天時の窓開け換気も可能にしてくれます。また、外壁の保護にも役立ちます。
POINT
2
土壁の蓄熱性を活かした温熱環境
❷ 構工法

土壁の蓄熱性能を充分に発揮させるために、その外側に断熱材を被せました。これにより保温効果が高まり、一日を通して安定した温熱環境となります。冬の暖房用には床下エアコン、夏の冷房用には壁付けエアコンを設置していますが、基本的に一台の稼働で家全体に大きな温度のばらつきも無く、快適な居住性を実現しています。
POINT
3
住みこなすことで得られる快適性と省エネ性
❺ 住まい方

気候の穏やかな季節には開口部を開けて風を通し、日射や冷気が気になる時には障子やブラインドで調整。厳しい季節には雨戸を閉じることで快適な住空間が手に入ります。建物の設えに加え、住まい手の暮らし方も大切になります。

リビングの大きな窓は全て引き込めるように設計されているため全開にすることもできます。
建物の概要
地域
神奈川県横浜市
6地域
竣工
2024年7月
階数
二階建て
床面積
104.57㎡
構造材料
【柱・梁】愛知県産 桧・杉 【壁】荒壁土
基礎
【種類】べた基礎 【柱脚】土台仕様
屋外仕上
【屋根】ガルバリウム鋼板 【壁】焼杉板張り 【主な窓】木製建具
屋内仕上
【床】杉本実板30mm 【壁】小牧土中塗り仕上げ 【天井】杉本実野地板板30mm現し
断熱
【基礎】スタイロフォーム50mm 【外壁】ウールブレス60mm 【屋根】フォレストボード100mm
UA値
0.81W/㎡K
BEI
0.87
告示786号
適合要件
1項一号ハ(1)(ⅰ)及び(2)(ⅰ①②)(ⅱ)
住まい手の暮らし方を伺うと、最暑期は壁掛けエアコン一台を、初冬〜晩冬の期間は床下エアコン(一般的な壁掛けエアコン)を間欠運転で24時間稼働させているそうです。温湿度計測の結果からは一日の中で温度変化が非常に緩やかであり、大屋根に包まれた一体空間であるため室内各所の温度差も小さい。
それでいて、実測値も基準値よりも44%削減されている結果をみると、快適性と省エネ性の両軸共に高い水準であることが明らかになりました。
要素
1
様式・形態・空間構成
全て引き込める掃き出し窓と引戸形式の建具、吹き抜けの一体空間と高窓により、自然な通風と環境調整を図る。さらに、深い軒庇により日射を適切に制御し、四季を通して快適性を確保する。
2
構工法
手刻みによる木組みの架構と土荒壁+外断熱により、伝統的な工法と現代的な工法を合わせることで快適な居住空間を実現する。 内部は真壁現しや野地板現しとし、自然素材の断熱材や藁床の畳を用い、外部は焼杉板張りや木製建具、多層構成の建具により、環境性と地域性、耐久性を兼ね備えた住まいとしている。
3
材料・生産体制
地元職人の登用と施工により、地域に根ざした技術の継承と品質の確保を図る。 また、地域産材を積極的に使用することで、風土に適した材料選択と環境負荷の低減に寄与する。
4
景観形成
丘陵地形を活かした外構計画により、敷地本来の起伏を生かした配置とする。 また、地域の植生を活かした植栽計画とし、周辺環境との連続性を図る。
5
住まい方
気候に応じた開口部の開閉や日射の調整により、季節に適した室内環境を整える。 また、衣服の着脱によって体感温度を調整し、機械設備に過度に依存しない暮らし方とする。
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